数学検定1級の合格体験記

概要

↓約二ヶ月後↓

やったぁ!

 

  終
制作・著作
━━━━━
 NHK

 

…と、これだけでは物足りないので詳細をいくつか書きます。

目次

数検とは・難易度

数学検定は漢検や英検みたいな検定の数学バージョンと思えばいいです。1級は大学レベルらしい。難易度としては小学四年生が受かるレベル検定ホームページに記載されている合格率を見て察してください。(2019年12月10日追記:最年少記録が更新されたみたいですね おめでとうございます)

勉強方法

参考書など

 大学レベルらしいけど、内容は微積線形と、確率統計が主です。よってまともに勉強している理系大学生ならB1~B2あたりで普通に受かるレベルにあると思います。ルベーグ積分論や、ガロア理論圏論多様体論などの内容はおそらく出ないでしょう。二次試験は数学科の人にとってなら呼吸するように解ける(解けなくてはいけない)ので一次試験の勉強を重点的にしましょう。ただB1~B2で受かるレベルにあるといってもそれはあくまで前提知識上だけの問題であり、実際に受かるためには検定特有の出題形式に慣れる必要があります。自分の場合は以下の2冊を使いました。

 

ためせ実力!めざせ1級! 数学検定1級実践演習

ためせ実力!めざせ1級! 数学検定1級実践演習

 

 これは出題形式に慣れるためのものです。問題を解くことで圧倒的解法力を身に着けましょう。特に三次対称式に関する問題や、逆三角関数に関する問題は検定でよく見る出題形式なので慣れる必要があるでしょう。最後に載っている実践形式のやつは実際に時間を計って解くべきです。数検は問題自体の難易度よりも制限時間のほうがハードです。数検対策においては計算力は重要なテーマになると思います。

 

 これは1冊目のあとに使った問題集です。実際に時間を計って解くことでリハーサルをするのに使いました。ところでこの参考書については時間とモチベの都合上、残念ながら最初の方の2回分しかやれなかったです。まあ、逆に言えば最初の二回分でも効果があるということだから、多少はね?

勉強時間

長期休み中の大学生なので遊んだりするわけです。よって毎日することはできないため予定がない暇な日に一極集中して7~8時間まとめてやるということを繰り返していました。合計の勉強時間は計っていないのでわかりません。参考書を購入したのは受験することを決めた次の日である2月15日であり、その後一冊目が終わったのが3月19日なので進捗としてはそのくらいだと思います。

…数検自体の対策にかけたのは2ヶ月ですが根本的な地力を身につけるのには長い時間がかかっていました。自分が数検を受けるのは今回が初めてでしたが、準1級レベルの力が身についたとされる頃から1級に受かるまでに2年以上かかりました。表象的に見える2ヶ月という期間だけで受かるとは到底思いませんね。もちろん出題範囲についての主な勉強方法は†大学の授業†です。

自作問題

勉強に飽きたあたりから自作問題を作っていました。せっかくなのでここに投下しておきます。暇な人は解いてね

{a,b}を正の実数とする。また、平面上の領域{D}

$$D=\left\{(x,y)\in\mathbb{R}^2: |x|\leq a,|y|\leq b,|\frac{x}{a}-\frac{y}{b}|\leq 1\right\}$$

として、 {(X,Y)}{D}上の一様分布に従う確率変数とする。このとき、{X}{Y}相関係数を求めよ。

 (この問題の答えについてはたぶん{a,b}に依存しない定数になったら正解だと思います。)

twitterにもいろいろ投下していました。

相関係数についての問題は例の一冊目の問題集に載っていてそれでハマったのか類題をいくつか作ってました。

その他(学習における姿勢など)

問題集に詰まったときは暗記に頼らずにきちんと理解し直すことを努めました。多変数関数の極大極小判定はその顕著な例です。授業でやったときは完全には理解できておらず、大学の期末試験のときも少しばかり暗記して乗り切っていたのですが、暗記に頼らない理解をすることで試験直前の復習が不要になりました。

 

また、本に出てきた諸テクニックは一般化してどのような局面で使えるかという考察をしていました。以下が例ですが、著作権が少し不安なので類題にしておきます。

{(a+b\sqrt{2})^3=7+5\sqrt2}を満たす自然数{(a,b)}は存在するか

というような問題のとき、{a^3+6ab^2=7,3a^2b+2b^3=5}という連立方程式を解くのですが、両辺を割って{b/a=t}とおけば{(1+6t^2)/(3t+2t^3)=7/5}と一元の方程式に帰着できて解ける、といったものですが、これを見ただけで鵜呑みにはせず、(2種類の方程式であって片方がそれぞれ斉次だったら解ける。さらに1つ目が3次、2つ目が2次なら①の2乗÷②の3乗で同じようなことができる…)というように新たなテクニックについても考察を怠らないことが大事です。

必須なもの

必須なものはいくつかありますが、電卓・コンパスは必要だと思います。自分は試験直前に買いました。(注:電卓・コンパスは二次試験のみ使用OK)

二次試験ではたまに作図問題が出ます。選択なので解かなくてもいいのですが、コンパスがないということは作図問題を捨てることと同義なので精神的負担が大きくなります。コンパスがあれば選択問題の選択の幅が広がり、状況に応じて作図に取り組んでもいいということになって安心アンコールワットですね。

さらに、電卓も必要だと思います。二次試験は二時間ある長期戦なのであまり心身に負担を掛けるべきではありません。脳のリソースは数学的考察の方に割くべきであって、数値計算をダラダラとやるほどの余裕は有馬温泉。そこで電卓があれば大量の計算によって脳が疲労することはなくなり、クリーンな状態で問題に対する考察をすることができます。最後に問題を全部とき終わって試験時間が余ったら暇つぶしに使えるいい感じのおもちゃになります。適当な正の数を入力したあと√ボタンを何度もクリックすると最終的に1に収束するので楽しい!となります。

まあ結局はバックアップのためにも、備えあれば憂いなしという精神です。電卓・コンパス合わせて千数百円、受験料の5000円(5200円に値上がりするらしい)に比べたら安いので迷った場合は買ってもいいんじゃない?

出題範囲についての一部の内容を解説するやつ

出題される内容はいろいろあるのですが、その中でも特に一つ、三次対称式に関する問題について少し書こうと思います。前述の通り三次対称式に関する問題は一次試験でよく出てくる印象があるので数検対策では必須なものになります。

公式集を一応載せておきます。覚えるだけではなく、実際に手を動かして計算の練習をするべきです。見たことがないやつが出てきたときは見たことがあるものを組み合わせて公式を錬成することも重要です。というか複雑な形が出てきた場合、どのように組み立てれば目当ての形ができるのかという勘を身に着けて、その結果公式が身につくという流れがいいと思います。(適当)

  • 解と係数の関係
  • {a^2+b^2+c^2=(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca)}
  • {a^3+b^3+c^3-3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)}
  • {x_n=a^n+b^n+c^n}は漸化式{x_{n+3}-(a+b+c)x_{n+2}+(ab+bc+ca)x_{n+1}-abcx_n=0}を満たす。
  • {(a+b)(b+c)(c+a)=(a+b+c)(ab+bc+ca)-abc}
  • {ab^2+ba^2+bc^2+b^2c+ca^2+c^2a=(a+b+c)(ab+bc+ca)-3abc}
  • {a^2b^2+b^2c^2+c^2a^2=(ab+bc+ca)^2-2abc(a+b+c)}

最後に

正直言うと受かったことなんてどうでもいい。

合否の結果よりも出題された問題について語りたかった。

出題された問題はどれも興味深いものであった。数検はすごいなあ…

だから問題について語りたい、とても語りたいのだが…

出題内容に関する事項を当協会の許可なくインターネットなどの不特定多数が閲覧できるような所に掲載することを固く禁じます。

 (出典:問題冊子表紙より)

†辞退する†

 

悲しいね

(この記事については「出題範囲の傾向に合わせて作った類題」であって「出題内容」とはかぶってもいなので多分大丈夫と信じたい)

追記(2019年5月25日)

採点結果が返ってきました。

 実は1次問7(微分方程式)は模範解答と少し違った表記をしていたため自分の中ではバツになっていたと思っていたのですが蓋を開けてみたら正解となっていました。採点基準は意外とゆるいのかもしれない?(というか問題に不備があるのではないだろうか?(小声)関数の定義域を明確に定めるべきだった)

また、2次問2はどこで減点されたのでしょうか?模範解答を見た辺り自分の答案では極限の計算方法がよろしくなかったというような気がします。(行間があったのかも)おとなしくロピタルを使うべきでした。