初めに
を参照してください
数式がうまく表示されない場合は再読み込みすると解決するかもしれません
第1問
$$\int_{0}^{1}xdx$$
の原始関数はです。これはを微分するととなることからわかります。よって
$$\int_{0}^{1}xdx=\left[\frac{x^2}{2}\right]_{0}^{1}=\frac{1}{2}$$
となります。
よって答えはです。
第2問
$$\int_{0}^{1}x^3(1-x)^3dx$$
2通りの方法を紹介します。
1つ目は普通に展開する方法
$$\int_{0}^{1}x^3(1-x)^3dx=\int_{0}^{1}x^3-3x^4+3x^5-x^6dx$$
$$=\left[\frac{x^4}{4}-\frac{3x^5}{5}+\frac{3x^6}{6}-\frac{x^7}{7}\right]_{0}^{1}$$
$$=\frac{1}{4}-\frac{3}{5}+\frac{3}{6}-\frac{1}{7}=\frac{35-84+70-20}{140}=\frac{1}{140}$$
より答えはです。
2つ目はベータ関数を使う方法
一般に自然数に対して以下の等式が成り立ちます。
$$\int_{0}^{1}x^n(1-x)^mdx=\frac{n!m!}{(n+m+1)!}$$
この等式にを代入すると
$$\int_{0}^{1}x^3(1-x)^3dx=\frac{3!3!}{7!}=\frac{6}{7\cdot 6\cdot 5\cdot 4}=\frac{1}{140}$$
となるため、答えはです。
第3問
$$\int_{0}^{\pi}x\sin{x}dx$$
これは部分積分を使う方法が一般的だと思います。
$$\int_{0}^{\pi}x\sin{x}dx=\left[x(-\cos{x})\right]_{0}^{\pi}-\int_{0}^{\pi}(-\cos{x})dx$$
$$=\pi+\int_{0}^{\pi}\cos{x}dx=\pi+\left[\sin{x}\right]_{0}^{\pi}=\pi$$
となるため、答えはです。
別解
$$I=\int_{0}^{\pi}x\sin{x}dx$$
として、と置換すると
$$I=\int_{\pi}^{0}(\pi-y)\sin{(\pi-y)}(-dy)=\int_{0}^{\pi}(\pi-y)\sin{y}dy$$
となり、これを足し合わせると
$$2I=\int_{0}^{\pi}x\sin{x}dx+\int_{0}^{\pi}(\pi-x)\sin{x}dx$$
$$=\int_{0}^{\pi}\pi\sin{x}dx=\left[-\pi\cos{x}\right]_{0}^{\pi}=2\pi$$
よってとなります。
第4問
$$\int_{0}^{1}\frac{dx}{1+e^x}$$
これはと置換すると解ける。このときとなり、の範囲はからまでとなります。すると
$$\int_{0}^{1}\frac{dx}{1+e^x}=\int_{0}^{1}\frac{e^x}{e^x(1+e^x)}dx$$
$$=\int_{1}^{e}\frac{1}{y(y+1)}dy=\int_{1}^{e}\frac{1}{y}-\frac{1}{1+y}dy$$
$$=\left[\log{\left(\frac{y}{y+1}\right)}\right]_{1}^{e}=\log{\left(\frac{e}{e+1}\right)}-\log{\left(\frac{1}{2}\right)}$$
$$=1-\log{(e+1)}+\log{2}$$
よって答えはです。
第5問
$$\int_{0}^{1}\frac{1}{\sqrt{1+x^2}}dx$$
いろいろな解法がありますが、一番スマートな方法だと以下のようになります。
と置換する。このとき、
$$\frac{dt}{dx}=\frac{1+\frac{x}{\sqrt{1+x^2}}}{x+\sqrt{1+x^2}}=\frac{1}{\sqrt{1+x^2}}$$
そしてが0から1まで動くときは0からまで動きます。(がについて単調増大であることに注意)
よって
$$\int_{0}^{1}\frac{dx}{\sqrt{1+x^2}}=\int_{0}^{\log{(1+\sqrt{2})}}dt=\log{(1+\sqrt{2})}$$
となるため、答えはとなります。
この問題、最初の置換は初見殺しに見えますがの形が登場する積分を計算するときにはよく使う変換方式なので覚えていて損はないかもしれません。
ちなみに余談ですがは双曲線関数を使うとというように書けるという話もあります。(キーワード:逆双曲線関数)
第6問
$$\int_{0}^{1}\log{(1+x^2)}dx$$
logが出てくる積分は部分積分と相性がいい*1のでそれが使えるかを確認してみましょう。
$$\int_{0}^{1}\log{(1+x^2)}dx=\left[x\log{(1+x^2)}\right]_{0}^{1}-\int_{0}^{1}x\cdot \frac{2x}{1+x^2}dx$$
$$=\log{2}-2\int_{0}^{1}\frac{x^2}{1+x^2}dx=\log{2}-2\int_{0}^{1}\frac{x^2+1-1}{1+x^2}dx$$
$$=\log{2}-2+2\int_{0}^{1}\frac{dx}{1+x^2}$$
ここで、
$$\int_{0}^{1}\frac{1}{1+x^2}dx$$
については、と置換します。するととなるため、
$$\int_{0}^{1}\frac{1}{1+x^2}dx=\int_{0}^{\pi/4}d\theta=\frac{\pi}{4}$$
よって
$$\log{2}-2+2\int_{0}^{1}\frac{dx}{1+x^2}=\log{2}-2+\frac{\pi}{2}$$
よって答えはです。
第7問
$$\int_{0}^{\pi/2}\frac{\sin{x}}{\sin{x}+\cos{x}}dx$$
これから使う手法ってどうやら「King Property」という名前がついていたらしいです。(つい最近知りました)
$$I=\int_{0}^{\pi/2}\frac{\sin{x}}{\sin{x}+\cos{x}}dx$$
について、と置換すると
$$I=\int_{0}^{\pi/2}\frac{\sin{\left(\frac{\pi}{2}-y\right)}}{\sin{\left(\frac{\pi}{2}-y\right)}+\cos{\left(\frac{\pi}{2}-y\right)}}dy$$
$$=\int_{0}^{\pi/2}\frac{\cos{y}}{\cos{y}+\sin{y}}dy$$
よって
$$I+I=\int_{0}^{\pi/2}\frac{\sin{x}}{\sin{x}+\cos{x}}dx+\int_{0}^{\pi/2}\frac{\cos{y}}{\cos{y}+\sin{y}}dy$$
$$=\int_{0}^{\pi/2}\frac{\sin{x}+\cos{x}}{\sin{x}+\cos{x}}dx=\int_{0}^{\pi/2}dx=\frac{\pi}{2}$$
であるため、となります。
よって答えはとなります。
第8問
$$\int_{0}^{1}\frac{dx}{1+x^4}$$
分母を因数分解するととなります。
これを使って被積分関数を部分分数分解します。すると
$$\frac{1}{1+x^4}=\frac{ax+b}{x^2+\sqrt{2}x+1}+\frac{cx+d}{x^2-\sqrt{2}x+1}$$
両辺にを掛けると
$$1=(ax+b)(x^2-\sqrt{2}x+1)+(cx+d)(x^2+\sqrt{2}x+1)$$
$$1=ax^3+bx^2-a\sqrt{2}x^2-b\sqrt{2}x+ax+b+cx^3+dx^2+c\sqrt{2}x^2+d\sqrt{2}x+cx+d$$
$$0=(a+c)x^3+(b-a\sqrt{2}+d+c\sqrt{2})x^2+(a-b\sqrt{2}+c+d\sqrt{2})x+b+d-1$$
これがについての恒等式となるためには
$$a+c=0,b+d=(a-c)\sqrt{2},a+c=(b-d)\sqrt{2},b+d=1$$
となることが必要になるけど、よりとなるためよりとなり、となるため、となる。よって結局
$$\frac{1}{1+x^4}=\frac{1}{4}\frac{\sqrt{2}x+2}{x^2+\sqrt{2}x+1}-\frac{1}{4}\frac{\sqrt{2}x-2}{x^2-\sqrt{2}x+1}$$
$$=\frac{\sqrt{2}}{8}\frac{2x+2\sqrt{2}}{x^2+\sqrt{2}x+1}-\frac{\sqrt{2}}{8}\frac{2x-2\sqrt{2}}{x^2-\sqrt{2}x+1}$$
となります。ここで、
$$\int_{0}^{1}\frac{2x+2\sqrt{2}}{x^2+\sqrt{2}x+1}dx=\int_{0}^{1}\frac{(2x+\sqrt{2})+\sqrt{2}}{x^2+\sqrt{2}x+1}$$
前半は分母を微分すると分子の形になるため対数の形に持っていくことができます。
$$\int_{0}^{1}\frac{2x+\sqrt{2}}{x^2+\sqrt{2}x+1}dx=\left[\log{(x^2+\sqrt{2}x+1)}\right]_{0}^{1}=\log{(2+\sqrt{2})}$$
後半は適切に置換することでtanの形の積分に持っていくことができます。
$$\int_{0}^{1}\frac{\sqrt{2}}{x^2+\sqrt{2}x+1}dx=\int_{0}^{1}\frac{\sqrt{2}}{\left(x+\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^2+\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^2}dx$$
$$x+\frac{1}{\sqrt{2}}=\frac{1}{\sqrt{2}}y$$
と置換します。するとの範囲はからとなります。よって
$$=\int_{1}^{1+\sqrt{2}}\frac{\sqrt{2}}{\frac{1}{2}(1+y^2)}\frac{1}{\sqrt{2}}dy=2\int_{1}^{1+\sqrt{2}}\frac{dy}{1+y^2}$$
次に、
$$\int_{0}^{1}\frac{2x-2\sqrt{2}}{x^2-\sqrt{2}x+1}dx=\int_{0}^{1}\frac{(2x-\sqrt{2})-\sqrt{2}}{x^2-\sqrt{2}x+1}$$
についてもほとんど同じような方法で解けます。
$$\int_{0}^{1}\frac{2x-\sqrt{2}}{x^2-\sqrt{2}x+1}dx=\left[\log{(x^2-\sqrt{2}x+1)}\right]_{0}^{1}=\log{(2-\sqrt{2})}$$
後半もほとんど同じです。
$$\int_{0}^{1}\frac{\sqrt{2}}{x^2-\sqrt{2}x+1}dx=\int_{0}^{1}\frac{\sqrt{2}}{\left(x-\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^2+\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^2}dx$$
$$x-\frac{1}{\sqrt{2}}=\frac{1}{\sqrt{2}}y$$
と置換します。するとの範囲はからとなります。よって
$$=\int_{-1}^{\sqrt{2}-1}\frac{\sqrt{2}}{\frac{1}{2}(1+y^2)}\frac{1}{\sqrt{2}}dy=2\int_{-1}^{\sqrt{2}-1}\frac{dy}{1+y^2}$$
まとめると、
$$\int_{0}^{1}\frac{dx}{1+x^4}=\frac{\sqrt{2}}{8}\left(\log{(2+\sqrt{2})}+2\int_{1}^{1+\sqrt{2}}\frac{dy}{1+y^2}\right)-\frac{\sqrt{2}}{8}\left(\log{(2-\sqrt{2})}-2\int_{-1}^{\sqrt{2}-1}\frac{dy}{1+y^2}\right)$$
ここで、は偶関数であるため、
$$\int_{-1}^{\sqrt{2}-1}\frac{dy}{1+y^2}=\int_{-\sqrt{2}+1}^{1}\frac{dy}{1+y^2}$$
となることに注意すると
$$=\frac{\sqrt{2}}{8}\left(\log{(2+\sqrt{2})}-\log{(2-\sqrt{2})}+2\int_{-\sqrt{2}+1}^{1+\sqrt{2}}\frac{dy}{1+y^2}\right)$$
ここで、
$$\log{(2+\sqrt{2})}-\log{(2-\sqrt{2})}=\log{\left(\frac{2+\sqrt{2}}{2-\sqrt{2}}\right)=2\log{(1+\sqrt{2})}}$$
$$\int_{-\sqrt{2}+1}^{1+\sqrt{2}}\frac{dy}{1+y^2}=\int_{\alpha}^{\beta}d\theta=\beta-\alpha$$
(と置換した。ここで、となる。)
ここで、となるため、となる。よってとなる。よって、
$$\frac{\sqrt{2}}{8}\left(\log{(2+\sqrt{2})}-\log{(2-\sqrt{2})}+2\int_{-\sqrt{2}+1}^{1+\sqrt{2}}\frac{dy}{1+y^2}\right)=\frac{\sqrt{2}}{8}\left(2\log{(1+\sqrt{2})}+2\frac{\pi}{2}\right)$$
$$=\frac{1}{4\sqrt{2}}\left(\pi+2\log{(1+\sqrt{2})}\right)$$
よって答えはとなります。
余談:実はは具体的に値を求めることができて、となります。tanの半角公式などを使って計算するとわかります。
第9問
$$\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}dx$$
これはガウス積分と呼ばれるものです。統計などで出てきます。重積分を使うことで解くことができます。
$$I=\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}dx$$
としたとき、
$$I^2=\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}dx\int_{-\infty}^{\infty}e^{-y^2}dy$$
$$I^2=\int_{-\infty}^{\infty}\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2-y^2}dxdy$$
これを変数変換します。とすると、(注意:ここでとする。)
ヤコビ行列は
$$J(r,\theta)=\begin{pmatrix}\frac{\partial x}{\partial r}&\frac{\partial y}{\partial r}\\\frac{\partial x}{\partial \theta}&\frac{\partial y}{\partial \theta}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\cos{\theta}&\sin{\theta}\\-r\sin{\theta}&r\cos{\theta}\end{pmatrix}$$
$$|J(r,\theta)|=r$$
となるため、
$$dxdy=|J(r,\theta)|drd\theta=rdrd\theta$$
となります。これをもとの積分に適用させると
$$I^2=\int_{0}^{2\pi}\int_{0}^{\infty}e^{-r^2}rdrd\theta$$
となって、項別積分すると
$$=\int_{0}^{2\pi}d\theta\int_{0}^{\infty}re^{-r^2}dr$$
となります。すると
$$=2\pi\left[\frac{1}{2}e^{-r^2}\right]_{0}^{\infty}=\pi$$
となるため、よってとなりますが、
であるためとなるためとなります。
よって答えはです。
第10問
$$\int_{-\infty}^{\infty}\frac{\cos{x}}{1+x^2}dx$$
これはフーリエ変換の計算で出てきます。複素積分の留数定理を使った手法で解くことができます。
$$\int_{-\infty}^{\infty}\frac{\sin{x}}{1+x^2}dx=0$$
となります(被積分関数が奇関数であることからわかる)
すると
$$\int_{-\infty}^{\infty}\frac{e^{ix}}{1+x^2}dx$$
を導けばいいことになる。これを複素積分で求めることを考える。
以下の積分経路を考える
とする。このとき
$$\int_{C}f(z)dz=2\pi i\mathrm{Res}_{z=i}f(z)=\frac{\pi}{e}$$
ここで、留数についてははで1位の極を持つため
$$\mathrm{Res}_{z=i}f(z)=\lim_{z\to i}(z-i)f(z)=\lim_{z\to i}\frac{e^{iz}}{z+i}=\frac{e^{-1}}{2i}$$
となっている。
ここで、
$$\int_{C_1}f(z)dz=\int_{-R}^{R}f(x)dx\to\int_{-\infty}^{\infty}f(x)dx(R\to\infty)$$
となっていて、
$$\left|\int_{C_2}f(z)dz\right|\leq \int_{C_2}|f(z)|dz\leq \pi R\frac{1}{R^2-1}\to 0(R\to\infty)$$
となる。よって
$$\int_{C}f(z)dz=\int_{C_1}f(z)dz+\int_{C_2}f(z)dz$$
の両辺のの極限を取ると
$$\int_{-\infty}^{\infty}f(x)dx=\frac{\pi}{e}$$
よって正解はとなります。
総評
問9と問10は範囲が大学レベルであり一見馴染みの薄い手法を使っているため難しいように感じるだろう。しかしこの2つは大学数学の基礎レベルであるため大学数学をやっていれば難しくない。何がいいたいかというと最も解答を書くのが大変だったのは問8でした。
あと余談ですがこのクイズを作るとき分野をいい感じに散らばせることに気を使った記憶があります。