角の三等分を作図しようとしたら衝撃の結果にwww

初めに

ギリシャの三大作図問題というものがあって、どうやら「角の三等分」「立方体倍積問題」「円積問題」は定規とコンパスで作図することは不可能とのことである。

ちなみにこれの証明はガロア理論が必要なのでとても難しい。

ところで、どうやらネット上には角の三等分ができた超人がいるらしい。すごいなぁ…

よく分かる解説

なぜ不可能なのか。ガロア理論は数学科の大学生がやるものなのだが、高校生でもわかるように解説すると以下の通りになる。

  • 定規とコンパスで作図することは、代数方程式を解くことに対応する。
  • しかし、定規とコンパスでは、1次方程式or2次方程式しか解くことができない
  • 角の3等分を作図するためには、3次方程式を解かなくてはいけない
  • つまり、できない

同様の理屈で、角の5等分をするためには5次方程式を解かなくてはいけないので作図不可能だし、7等分も7次方程式を解かなくてはいけないので不可能なのである。

角の三等分については、三倍角の公式

$$\sin{3\theta}=3\sin{\theta}-4\sin^3{\theta}$$

について、

$$k=3x-4x^3$$

という三次方程式を、与えられた$k$について解くことに帰着されるのである。

角の4等分については、4次方程式を解きそうだが、これについては2次方程式を2回解くことに帰着されるため問題ない。(つまり角の2等分したあと更に2等分すればよい。)角の8等分についても同様である。

それっぽい厳密な解説

詳しく知りたい人は青雪江あたりを読みましょう。

平面上の点を複素平面と対応してみる。すると$L\subset \mathbb{C}$という「作図可能な点全体の集合」というものを取ることを考える。

作図可能な点は以下のように定義する

  1. $0,1\in\mathbb{C}$は作図可能。つまり、$0,1\in L$
  2. $\alpha,\beta\in L,\alpha\neq \beta$としたとき、$\alpha,\beta$を通る直線を引ける
  3. $\alpha,\beta\in L,\alpha\neq \beta$としたとき、$\alpha$を中心として$\beta$を通る円を描ける
  4. 2.3.で作図した直線or円から2つ選んで、それの交点となる点は作図可能な点とする。
  5. 以上の操作を有限回行って構成できる点だけを作図可能な点と定義する。

ここで、$L$は体である。つまり加減乗除について閉じている。さらに$L$は有理数を含む。

$\mathbb{Q}\subset L\subset \mathbb{C}$

 つまり、$L/\mathbb{Q}$は体の拡大になっている。

ここで、以下の結果が知られている。

$\alpha\in\mathbb{C}$が、$\alpha \in L$であることの必要十分条件は以下の通り

$$\mathbb{Q}=K_0\subset K_1\subset \cdots \subset K_n=\mathbb{Q}(\alpha)$$

としたとき、{[K_{m+1}:K_{m}]=2,(m=0,\ldots,n-1)}である。

わかりやすく言えば、「$\alpha$は有理数加減乗除+ルートだけを有限回使うことで表現することができる」ことが必要十分条件である。

 

与えられた角が出てくる場合にもやることは本質的には同じで、

$$\mathbb{Q}(e^{i\theta})=K_0\subset K_1\subset \cdots \subset K_n=\mathbb{Q}(e^{i\theta})(\alpha)$$

に対して、$[K_{m+1}:K_m]=2,(m=0,\ldots,n-1)$を言う必要がある。

しかし、一般の角に対して三等分するとき、$[K_n:K_0]=3$なのでどのように中間体を持ってきても3にはならないので無理ということである。

ここで、$3x-4x^3=\sin{\theta}$という三次方程式は$\theta$がよっぽど都合のいい値でない限り$\mathbb{Q}(e^{i\theta})$上既約であるため、拡大次数は3となる。

 

ちなみに、正n角形が作図可能な条件について調べると、フェルマー素数がどうこう出てくるが、これは$\varphi(n)=2^k$というように言い換えることができる。ここで$\varphi$はトーシェント関数である。これは$\exp{(\frac{2i\pi}{n})}$を$\mathbb{Q}$に添加した体の拡大次数が$\varphi(n)$になることから来ている。(円分多項式を参照)

超人にありがちなこと

では、なぜ角の三等分ができてしまう超人が現れてしまうのだろうか?あり得る可能性は、以下のどれかといったところだろう。

  • そもそも三等分できてない
  • 定規とコンパス以外の謎道具を使っている
  • 無限回の操作をしている
  • 特殊な角度(例えば90°)を三等分している
  • 定規に目盛りがついている

新種を発見した場合、加筆するかもしれない

そもそも三等分できてない

見た目は三等分に見えるけど、実際はただの近似値なので実はできてないというやつ。

desmosやgeogebraなどでシミュレーションすれば判定できるのでやってみよう

謎道具を使っている

この主張は「定規とコンパスしか使わない」という前提のもとで成り立つので、定規とコンパス以外の謎道具を使ってできたとしても、前提が成り立っていないため、この主張の反例にはならない。

ネットで調べるといろいろな道具を考案している人がいて面白かったりする。

しかし、定規とコンパス以外の何かを使うのはレギュレーション違反なので別の方法にしましょう。

追記:例えば折り紙を使うと角の三等分ができるが、その場合途中で作図不可能な動作が入ることとなる。

無限回の操作をしている

$$\frac{1}{3}=\frac{1}{2}-\frac{1}{4}+\frac{1}{8}-\frac{1}{16}+\cdots$$

なので、角の2^n等分を無限回繰り返したらできそうに見える。

しかし、作図は「有限回の操作」を前提としているため、無限回の操作によって三等分できたとしても、前提が成り立ってないので、前述の主張の反例とはならない。

ちなみに無限回の操作を認めた場合任意の点が作図可能になるはず(有理数は稠密なので)

とりあえず、操作回数が無限なのはレギュレーション違反です。

特殊な角度(例えば90°)を三等分している

この主張がやっていることは、「任意の角度を三等分できるか」ということなので、90°を三等分できたからといってそれで終わりではない。一般の角度を三等分する方法を探してみよう!(無慈悲)

まあ、「よほど都合のいい角度でない限り$\sin{\theta}=3x-4x^3$は既約多項式である」という記述をしたが、都合のいい角度のときには$\sin{\theta}=3x-4x^3$は可約多項式となるため、そのような都合のいい角度のときに限り作図可能となるのである。

定規に目盛りがついている

作図のルールとして、「定規に目盛りは付いていてはいけない」というものがある。つまり目盛り付き定規はNG

(ただ有理数座標だけに目盛りが付いたところで結果が変わるとは思えんが…)

まあ、無理数の位置に目盛りを使うのは明らかな反則ですね。

その他

見つかり次第加筆予定

 

最後に

ガロア理論をやろう!