地球が無限に広い平面だったときにありがちなこと

注意

地球は平面ではありません

概要

地球が無限に広い(厚みのある)平面だったときにどうなるかを考えてみる

つまり、xyz平面で考えたとき、$\{(x,y,z)\in\mathbb{R}^3;-H\leq z\leq 0\}$という領域が地面である。

また、$G$を万有引力定数、地球の密度は$\rho$で一様とする。

重力

ここで、$(x_0,y_0,z_0)$の位置で働く重力加速度と$(0,0,z_0)$の位置で働く重力加速度の大きさは等しい。これは以下の積分を適切に変数変換すれば分かる。

$(0,0,z_0)$の位置で働く重力加速度を考える。

積分で頑張る

$$\int_{-\infty}^{\infty}dx\int_{-\infty}^{\infty}dy\int_{-H}^{0}dz \frac{G\rho (x,y,z-z_0)}{\sqrt{x^2+y^2+(z-z_0)^2}^3}$$

円柱座標に変換する

$$\int_{0}^{\infty}dr\int_{0}^{2\pi}d\theta\int_{-H}^{0}dz \frac{G\rho (r\cos{\theta},r\sin{\theta},z-z_0)}{\sqrt{r^2+(z-z_0)^2}^3}r$$

 $\theta$で積分したとき、$x,y$方向については全方位から平等に力がかかるため全部打ち消されてしまう。よって重力の方向は$z$軸と平行である。よって以降は$z$成分のみを考える。

$$\int_{0}^{\infty}dr\int_{-H}^{0}dz \frac{G\rho (z-z_0)}{\sqrt{r^2+(z-z_0)^2}^3}2\pi r$$

 先に$r$で積分する

$$\int_{-H}^{0} \left[\frac{-2\pi G\rho (z-z_0)}{\sqrt{r^2+(z-z_0)^2}}\right]_{r=0}^{r=\infty}dz$$

$$\int_{-H}^{0} \mathrm{sgn}(z-z_0) 2\pi G \rho dz$$

 よって、最終的な重力は

$$\left\{\begin{matrix}-2\pi G\rho H &z_0\geq 0\\2\pi G\rho (H+2z_0)&0\geq z_0\geq -H\\2\pi G\rho H& z_0\leq -H \end{matrix}\right.$$

となる。

つまり、こうなっている

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万有引力の法則によると、地球の重力は地球から離れれば離れるほど小さくなるが、この状況では、地球からどれだけ離れようとも重力は一定である。つまり人工衛星レベルの運動でさえ高校物理の斜方投射レベルの扱いで考えることができるし、東京からボールを飛ばしてパリの凱旋門を狙うために必要な初速度を計算するときにも、地球の丸みを考慮する必要はないのである!

 

ここで、地球が球体である場合の重力加速度は$2\pi G\rho\cdot \frac{2}{3}R$であるため、$H=\frac{2}{3}R$ならば重力加速度は現実世界における地球のそれと等しくなる。

地球が平面であることによる弊害

人工衛星は存在することができない。というものの、現実世界における人工衛星は地球の周りを回転することにより、重力と遠心力が打ち消し合っているため落ちないのである。

地球が板だったら回転運動のしようがないし、重力はどこに言っても一定なのでどんなに頑張っても地球の重力圏から逃れることができない。つまりこの世の全てのものが地面めがけて落ちてくるのである。

太陽も月も星も銀河も何もかも全部が地面めがけて9.8m/s^2で落ちてくるのだ。*1

この世の全てが落下してくるため、最終的には宇宙に存在するのは無限にだだっ広い板だけになる。

ロケットで地球を脱出する計画も無理である。どれだけ離れても重力から逃れることはできない。ロケットは最終的には燃料がなくなってしまうため、その後はただの斜方投射になってしまい最終的には地面に墜落してしまう。どんだけ速くしても結果は同じ。

反対側の世界に行くためには

地球が板である場合、板によって宇宙は2つの領域に分けられる。お互いの領域は重力の向きが反転しているため反世界みたいな感じになっているが、トンネルを掘ることでお互いの世界を行き来することができる。

というのも、地球内部の重力加速度については距離に対して一次関数な変化をしているため、穴を掘って物体を落とすと見事単振動をしてくれる。

微分方程式を解くと

$$z(t)=A\sin{(\sqrt{4\pi G\rho}\cdot t+\delta)}+B$$

という形の解になるため、これは

$$z(t)=A\sin{(\sqrt{3g/R}\cdot t+\delta)}+B$$

 となる。これは、球体地球における貫通トンネルと比べて√3倍速いという意味となる。

具体的な数値を代入すると24分22秒で反対側に行けるということがわかる。しかも動力不要

最後に

もしこのような空想上の産物が現実だった場合には大変なことになりそうだ。少なくとも月が落ちてこない以上これはあくまでフィクションに過ぎないのである。

*1:相対性理論を考慮するともっと大変なことになりそう(小並感)