コンテストページ
はじめに
今回は単独writerをしました。自分が作った問題が多くの人に解かれるってなるとドキドキしますね。
ちなみにwriterは初ではなく、OMC043(C)で積分を出題したことがあります。なので微積を出題すると思われていたのか、「微積ぞい」というツイートを見たときは面白かったです。
A問題
中国剰余定理で何か作ろうという経緯で作問しました。$(n\mod 7)(n\mod 11)(n\mod 13)$という式の数学的意味が見えにくいので「人工的な問題」に見えてしまうかもしれません。ですが、個人的に好きなタイプの問題で、うまく作れたかなと思いました。(自画自賛)
7×11×13=1001を知ってないと見えにくかったかもしれません。
B問題
空間図形の問題です。空間把握能力が要求されます。
積分した人がそれなりにいましたが、わざわざ積分しなくても、図形のイメージが上手くできれば、六角錐×2、または立方体-三角錐×6であると分かるかもしれません。
ちなみに個人的に好きな立方体の切断方法は、断面が正六角形になるような切断です。
また、予想以上に解かれてなかったです。BとDが逆転することは全く読めませんでした。
自分は日頃からgoogle sketchupとかで遊んでいたので、このような図形を自然とイメージすることができました。
余談ですが、暗殺教室という漫画の二学期期末試験の最終問題として出てきた数学の問題が個人的に気に入ってて、それに関連する立体を日頃からイメージすることが多かったのかもしれません。(注:模型も作りました:https://twitter.com/shakayami_/status/1237621291034628097)このOMCのB問題に出てくる六角錐は浅野学秀が体積を求めようとした結果時間切れになってしまったもの、という印象が大きいです。
C問題
$f(n)$はpopcountです。発想としてはbit列に関する問題を作ろうというのがありました。しかし、$\sum f(n)$は既出度が高いため、次点として$\sum nf(n)$が候補として出てきました。
また、原案では$N=2^{20}$だったのですが、最終的な答えは$(N+1)$を因子として持つので、2で割り切れる最大回数を問うならば$N=2^{20}-1$のほうが答えとして面白いだろうなと思ってそうしました。
ちなみに、$\sum_{k=0}^{N}\binom{N}{k}k^2$は、$(1+x)^N$を微分したり$x$を掛けたりして求める派です。
また、OMC043-Dを見たとき似ててびっくりしました。(OMC043の時点でこのC問題は審査に通っていたので)
D問題
ravi変換の布教です(直球)
三角形に関する量を$ x,y,z $という3つのパラメータで表現することが好きなので、このような問題を作りました。面積・外接円の半径・内接円の半径はともに$x,y,z$に関する対称式なので、最終的に三次方程式を解かせることを目標として考えると、求めるべき量は対称性が崩れているほうがいいなと思ったため、「2番目に長い辺」となりました。
これは自分の予想以上に解かれていて驚きました。特に、BとDが逆転することは予想外でびっくりしました。*1確かにエスパーをすれば答えを出すこと自体は簡単かもしれませんね
ちなみにこの問題のプロトタイプは、「面積:49920,外接円の半径:205,内接円の半径:96」と全部整数となっていたのですが、三次方程式を解かせるのは無理ゲーなので今の形になりました。
E問題
$f(n)$はゼッケンドルフの定理で$n$を表現したときの$1$が立っている数です。
フィボナッチとゼッケンドルフの定理で何かしら作ろうと思ってできたのがこの問題です。2021とうまく絡ませるのに苦戦しました。
コンセプトとしてはC問題と似ていると言われればそうかもしれません。
2021をゼッケンドルフの定理で表してから気合でやるくらいしか解法が思い浮かばないので、けっこうゴリ押しタイプの問題だと思いました。
CとEは同じくらい解かれていますが、Eのほうがめんどいので意外だなと思いました。
F問題
ボス問です。10人に解かれました。
この問題を一言でいうと「やることが多い問題」だと思います。5つくらいの問題を悪魔合体して1つの数式になった、いわゆるキメラみたいなものだと思えばいいでしょう。見た目はいかついですが、ステップを地道に重ねれば解けるようになっています。
- $\prod_{\tau \subset \sigma}$の処理(主客転倒)
- $\sum_{\sigma \in S_N}$の処理(転倒数についての数え上げ)
- 「2で割り切れる最大回数」の処理($3^n-1$が2で何回割れるか)
- $\prod_{N=1}^{2^{2021}-1}$の処理($N!$が2で割り切れる回数,popcountの総和など)
- 「2017で割った余り」の処理(フェルマーの小定理など)
というように、それぞれが1つの問題となっています。
さらに、罠も多いので注意です。
まず、LTEの補題は使えないことに注意です。(LTEの補題は奇素数にのみ適用される)この問題の場合、LTEの補題と似たような性質が成り立ちますが、微妙に値が異なります。
さらに、$N=2$だけ特殊なことにも注意です。これはwriterである自分も罠にはまりかけました。完成ボタンを押した直後に気づいて直しました。
この問題の誕生経緯を話すと、某日の夢の中で以下のような数式が出てきたことがきっかけです。
$$\sum_{\sigma\in S_N}\mathrm{inv}(\sigma)^2$$
$$\sum_{\tau\subset \sigma}\mathrm{inv}(\tau)$$
もともと、これらは別々の問題として生成される予定でした。
ところで、前者は計算が難しいなと思いました。$\mathrm{inv}(\sigma ) $の総和ならば、$(1+x)(1+x+x^2)\cdots(1+x+\cdots+x^{n-1})$を微分して1を代入すればいいのですが、$\mathrm{inv}(\sigma)^2$の場合、微分してさらに$x$を掛けた後さらに微分して1を代入する必要があるので、無理とは言わなくても面倒なので嫌だなと思ったわけです。
そこで、別案を考えたとき、$3^{\mathrm{inv}(\sigma)}$ならば$(1+x)(1+x+x^2)\cdots(1+x+\cdots+x^{n-1})$に$x=3$を代入するだけな上、あまり見かけない形だったので良いなと思ったわけです。
そして、この形に到達したとき、後者の式(部分列全体を走るΠ)とうまく合体できそうだと思ったので合体したというのがこの問題の大まかな誕生経緯です。
その他の要素はある程度自然な経緯で導入されました。
この時点では$N=2021$のときの2で割り切れる最大回数でしたが、計算したところ、総和を取ったほうが面白そうだったので総和(2で割り切れる回数の総和なので、つまり総積)を取りました。すると、2で割り切れる回数もでかくなりすぎたので剰余を取るという形になったというわけです。
総評
今回の問題セットは完全に個人的な好みになってしまったなと思いました。ただ、好みといえど、ある程度分野をバラけさせるのには気をつけました。
この問題セットからwriterの趣味嗜好を推測してみよう!
- 7,11,13という素数の組好きそう(A,D)
- 2で割り切れる最大回数好きそう(C,F)
- ravi変換好きそう(D)
- 三角形に関する量をパラメータで表現するの好きそう(D)
- 3文字の対称式好きそう(D)*2
- 2進数のpopcountとか好きそう(C,F)
- 立方体を断面が正六角形になるように切断するの好きそう(B)
- 中国剰余定理好きそう(A)
- ゼッケンドルフの定理好きそう(E)
- 主客転倒とか好きそう(C,F)
最後に
OMC運営・testerの人々ありがとうございました。
あとエゴサしたり、順位表眺めたりするの楽しかったです。