勉強しない=留年, 勉強=留年しない

概要

勉強+勉強しない=留年+留年しない

(1+しない)勉強=(1+しない)留年

勉強=留年

だったら遊ぼっか

考察

Rを可換環とする。Rの元a,b,cについて

勉強=a,留年=b,しない=cとおくと、

$$ac=b$$

$$a=bc$$

が成立している。このとき、$a=b$となるだろうか?

 

まず、「(1+しない)勉強=(1+しない)留年」まではどのような可換環でも成り立つ。これは環の公理として分配法則が課されているからである。

 

しかし、その次の行で両辺を(1+しない)で割っているが、そこが怪しいのである。

 

真っ当な例としては、(1+しない)=0であるような場合である。御存知の通り両辺を0で割ることはできない。つまり、勉強と留年が加法の逆元の関係にあって、しない=-1であるような場合がすぐ思いつくような反例である。

 

では、すぐに思いつかないような反例とはなんだろうか?

そもそも、両辺を(1+しない)で割るとはどういうことなのかを詳細に書き直してみると、

(1+しない)勉強=(1+しない)留年より、(1+しない)(勉強-留年)=0

$$(1+c)a=(1+c)b\Rightarrow (1+c)(a-b)=0$$

という式があって、ここで、$1+c\neq 0$ならば、$a-b=0$が従うということを言っている。

つまり、「$\forall x,y\in R,xy=0\Rightarrow x=0\lor y=0$」ということである。

この性質は全ての環で成り立つとは限らない。ここで、このような性質が成り立つような環のことを整域という。とりあえず、$R$が整域のときの解を全列挙してみる。

 

まず言えることとして、

$$ac=b\Rightarrow ac^2=bc=a$$

$$bc=a\Rightarrow bc^2=ac=b$$

 

$a=0$ならば、$ac=0$より、$b=0$である。このとき、$c$はどんな値でも構わない。よって、$(a,b,c)=(0,0,c)$が解である。

 

$a\neq 0$ならば、$c^2=1$より、$(c+1)(c-1)=0$である。整域の性質より、$c+1=0$または$c-1=0$である。よって、$(a,b,c)=(a,-a,\pm 1)$が解である。

 

よって、$R$が整域であるときの解は(勉強,留年,しない)=(0,0,x),(x,-x,1),(x,-x,-1)が全てである。

この中で勉強=留年が成り立つならば、 勉強=留年=0 または しない=1 となる。

前者は勉強も留年も全て虚無であることを言っていて、後者は否定が否定でなくなってるので、どっちも感覚的におかしい。

感覚的には「しない=-1」であるが、この場合は(1+しない)=0であり、0で割ってしまっているのでおかしいし、勉強=留年=0でない限り勉強=留年とはならない。

 

数学的に正しくてかつ感覚的にも合致している解は存在するだろうか?

一般の環で$ac=b,bc=a,a=b\neq 0,c\neq 1$となるような状況を考えてみる。

このとき、$ac=a$より、$a(c-1)=0$である。よって、$R$が整域でなければ可能性はある。というか、整域でなければ解はある。

例えば、$\varepsilon$を、$\varepsilon^2=0,\varepsilon\neq 0$となるような数とする。より踏み込んだ話をすると、$\varepsilon$は$\mathbb{R}[x]/(x^2)$において、$\varepsilon=[x]$である。

このとき、$\varepsilon^2=0,\varepsilon\neq 0$で$(a,b,c)=(\varepsilon,\varepsilon,1+\varepsilon)$が解となる。

他にも、$R=\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$としたときの$(a,b,c)=(2,2,4)$も解である。

 

まあ、どのような例であれ、解が存在したからといってこの「証明」が数学的に正しいわけではない。上記でやったことは勉強=留年となるような例を列挙したことであって、勉強=留年が成り立つことを証明したわけではない。というか、勉強≠留年となるような例のほうが遥かに多いだろう。

おわりに

残念ながら、この議論は数学的には正しくない。正当化しようと頑張ったけど厳しかった。やはり(1+しない)で割っているところのギャップを埋めるのは難しい。

また、こうやってどうでもいいことばっか考えて時間を無駄にしてしまったので、残念ながら留年してしまいました。これこそ勉強しない=留年かな