計算量の減る分割方法(数学夏祭り問2)

出典

 攻略法

座標で置くのが確実であるように見えるが、計算量が多くなってしまう。

ということで若干初等幾何的な解法を考えてみることにした。

(ちなみに、この記事内での作図はdesmosというサイトを利用しています。)

図示

図にすると以下のようになる。

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ここで、オイラー線というものがあるため、垂心・重心・外心は全て一直線上にあり、HG:GO=2:1を満たしている。

このことから、LとDもオイラー線上に存在することがわかる。

オイラー線の上での位置関係を図示すると以下のようになる。

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ここで、

$$4 : x=(m-n) : n$$

となるため、

$$x=\frac{4n}{m-n}$$

となる。

結局、

$$\mathrm{GO}:\mathrm{GD}=1:\frac{4m}{m-n}$$

となっている。

四角形の分割方法

四角形ABCDの面積を求めよという文章を見ると三角形ABC+三角形BCDという和を求めたくなるが、この場合三角形BCDの面積を求めるときに計算量が多くなってしまう。以下のように分けてみるとうまくいく。オイラー線上での位置関係を考察したのはこのためである。

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XはA,B,G,Cで囲まれた領域であり、YはB,D,C,Gで囲まれた領域である。

XとYの面積は比較的簡単に求まる。

実際、

  • Xの面積は三角形ABCの面積のちょうど3分の2倍
  • Yの面積は【B,O,C,Gで囲まれた領域】の面積のちょうど{\frac{4m}{m-n}}

となっている。

一応簡単な証明。

Xについては、重心が中線を2:1に内分することからわかる。(実際、三角形AGB,三角形BGC,三角形CGAで三角形ABCの面積をちょうど三等分している)

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Yについては、点G,O,Dから辺BCへの垂線を下ろしたとき、三角形の相似から高さが辺の比になっていることからわかる。

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よって、これらの面積を求めれば答えを出すことができる。

面積計算

今までは初等幾何的なアプローチだったが、ここからは三角関数的なアプローチをする。ここで、以下の三角比の値に注意

$$\tan{\frac{\pi}{8}}=\sqrt{2}-1,\tan{\frac{3\pi}{8}}=\sqrt{2}+1$$

証明は{\tan{\frac{\pi}{8}}=t}とおいたとき、倍角の公式より{\frac{2t}{1-t^2}=1}という方程式を解けばよい。これは2次方程式になって、出てきた解のうち正であるものを取ると{t=\sqrt{2}-1}が出てくる。{\tan{\frac{3\pi}{8}}}については{\tan{\frac{\pi}{8}}}の逆数であることから従う。

 

注:以降では、以下のような記号を使う。

  • {R}:三角形ABCの外接円の半径
  • {a}:BCの長さ,{b}:CAの長さ,{c}:ABの長さ

例えば、{a=\sqrt{6}}である。

 

まずは三角形ABCの面積を計算する。

{\angle \mathrm{A}=\frac{5\pi}{8}}である。三角形ABCの外接円の半径をRとしたとき、正弦定理より、

$$2R=\frac{a}{\sin{\frac{5\pi}{8}}}=\frac{a}{\sin{\frac{3\pi}{8}}}=\frac{a}{\cos{\frac{\pi}{8}}}=\frac{\sqrt{6}}{\cos{\frac{\pi}{8}}}$$

となる。

また、正弦定理より、

$$\frac{c}{\sin{\frac{\pi}{8}}}=\frac{\sqrt{6}}{\cos{\frac{\pi}{8}}}$$

であるため、

$$c=\sqrt{6}\tan{\frac{\pi}{8}}=\sqrt{6}(\sqrt{2}-1)=2\sqrt{3}-\sqrt{6}$$

となる。

すると三角形ABCの面積は

$$\frac{1}{2}ac\sin\angle B=\frac{1}{2}\cdot \sqrt{6}\cdot (2\sqrt{3}-\sqrt{6})\cdot \frac{1}{\sqrt{2}}$$

$$=\frac{3}{2}(2-\sqrt{2})$$

となる。

 よってXの面積はこれの3分の2なので

$$X=2-\sqrt{2}$$

となる。

 

次にGBOCの面積について考える。これは三角形GBC+三角形BOCで分けて考えるといいだろう。

三角形GBCの面積については三角形ABCの3分の1なので

$$\frac{1}{2}(2-\sqrt{2})$$

となる。一方三角形BOCについては図のようになる。

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円周角の定理から{\angle \mathrm{BOC}=\frac{3}{4}\pi}であることがわかり、{\mathrm{BO}=\mathrm{CO}=R}となっている。よって三角形BOCの面積は

$$\frac{1}{2}R^2\sin{\frac{3\pi}{4}}=\frac{1}{2\sqrt{2}}R^2$$

$$=\frac{\sqrt{2}}{4}\cdot \frac{6}{4\cos^2{\frac{\pi}{8}}}=\frac{3\sqrt{2}}{4(1+\cos{\frac{\pi}{4}})}$$

となる。ここで、正弦定理より{R=\frac{\sqrt{6}}{2\cos{\frac{\pi}{8}}}}である。最後の等式はcosについての倍角の公式より従う。

これを整理すると

$$=\frac{3\sqrt{2}}{4+2\sqrt{2}}=\frac{3(\sqrt{2}-1)}{2}$$

となる。結局GBOCの面積は

$$\frac{1}{2}(2-\sqrt{2})+\frac{3}{2}(\sqrt{2}-1)=\frac{1}{2}(2\sqrt{2}-1)$$

となる。

Yの面積はこれの{\frac{4m}{m-n}}倍であるため、

$$Y=\frac{2m(2\sqrt{2}-1)}{m-n}$$

となる。

 

 よって最終的な答えは

$$(2-\sqrt{2})+\frac{2m(2\sqrt{2}-1)}{m-n}$$

であり、これを整理すると

$$\frac{3\sqrt{2}m-(2-\sqrt{2})n}{m-n}$$

となる。

余談(座標で置いたときの解法)

Bを{(0,0)}、Cを{(\sqrt{6},0)}とおいて、他の点の座標を考える。

このとき、Aは

$$y=x,y=-\tan{\frac{\pi}{8}}(x-\sqrt{6})$$

という連立方程式の解{(x,y)}であるため、{\tan{\frac{\pi}{8}}=\sqrt{2}-1}に注意すると

$$A=(\sqrt{6}-\sqrt{3},\sqrt{6}-\sqrt{3})$$

が出てくる。

他の点の座標も求めてみる。

まず重心については、3頂点の座標の平均を取ればよい。

すると

$$G=\left(\frac{2\sqrt{6}-\sqrt{3}}{3},\frac{\sqrt{6}-\sqrt{3}}{3}\right)$$

となる。

垂心については各辺の垂線の交点である。

BのACに対する垂線は{y=\tan{\frac{3\pi}{8}}\cdot x=(1+\sqrt{2})x}であり、

AのBCに対する垂線は{x=\sqrt{6}-\sqrt{3}}であるから、これを連立させると

$$H=(\sqrt{6}-\sqrt{3},\sqrt{3})$$

が出てくる。

外心については垂直二等分線の交点であるから、

$$x+y=\sqrt{6}-\sqrt{3},x=\frac{\sqrt{6}}{2}$$

を連立させることで

$$O=\left(\frac{\sqrt{6}}{2},\frac{\sqrt{6}-2\sqrt{3}}{2}\right)$$

が出てくる。

オイラー線上の点は

$$\overrightarrow{G}+t\overrightarrow{GO}$$

というベクトルで書けるため、以下のようになる。

$$\left(\frac{2\sqrt{6}-\sqrt{3}}{3},\frac{\sqrt{6}-\sqrt{3}}{3}\right)+t\left(\frac{-\sqrt{6}+2\sqrt{3}}{6},\frac{\sqrt{6}-4\sqrt{3}}{6}\right)$$

これは、

  • {t=-2}のとき、垂心H
  • {t=0}のとき、重心G
  • {t=1}のとき、外心O
  • {t=4}のとき、L
  • {t=\frac{4m}{m-n}}のとき、D

に対応している。よって{t=\frac{4m}{m-n}}を代入してDのy座標を計算すると答えを出すことができる。ただし計算量が多いのでWolfram Alphaに頼るのが良いのかもしれない。

ちなみにオイラー線の方程式は以下のようになっている。

$$y=-(3+\sqrt{2})x+2\sqrt{6}$$

おまけ(desmosのデータ)